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主に新作が出た時に更新してます。
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一応前回の続きなようなそうでないような。
会話じゃなくて一人ごちになってますががg

…足が重い。
けど、痛みは感じない。
先刻の一矢で、神経ごとやられてしまったのか。
それでも、引きずるようにして一歩、また一歩、街に向かって前進するしかない。

……迂闊だった。
もうすぐタルシスだからと、油断していた。
分かっていたはずなのに。
「奴ら」なら。そう、「奴ら」なら。
詰めを誤るわけがないのに。
私達の緊張が和らぎ、疲れもピークだというこの時を。
見逃すはずがないと。
……少し考えれば、予想できていたはずだったのに。

あの人が身を呈して逃がしてくれなければ、私もこの子達も、とっくに命を絶たれていただろう。
…ごめんなさい。ごめんなさい。
私はあの人に、何も返してあげられなかった。
森の中で倒れていた私を、何も言わずに助けてくれたあの人。
あの人のおかげで、私は人間の中にも優しい者がいあると知ることができた。
そのことを同胞に話したら、私は故郷を追い出されることとなってしまったけれど。
けど、悔いは無かった。寂しくもなかった。
だって、あの人がずっと側に居てくれたのだから。
こうして、最高の宝物を授かることもできたのだから。
だから、だからこそ。
あの人から貰ったこの宝物だけは、守り抜きたい。
その一心だけで、私は最後の力を振り絞って、タルシスまでの道を歩んでいる。
もう視界もぼやけてきている。
耳からは、泣き止まないこの子たちの泣き声すらはっきりと聞き取れない。

…ごめんなさい。

…ごめんなさい。

私は、あなたたちに何ひとつ母親らしいことをしてあげられないまま、
このままいなくなってゆくだけの存在だけれど。
けど、これで。
このまま、あの人も、私も、この世から居なくなれば。
あなたたちは、人殺しの親なんて惨めな記憶を受け継ぐこともないまま。
あの街、タルシスで。
あなたたちだけの人生を、歩んでいけるだろう。
どうか、あなたたちだけは。
どうか、幸せな人生を。

どうか―――
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