とあるふたりの夫婦の会話

一応４に繋がる話ですが、創作色強め＆イミフにつき注意。

「もうすぐタルシスですね

「ええ、そうね…
…私達、あの場所で本当にやり直せるのかしら？

「勿論。これだけ遠い場所まで来たんです、
あの街での俺たちを知ってる人間なんて居ないに決まってます。
俺たちも、この子たちも、新しい人生を踏み出せるはずですよ

「…だといいのだけど…
……ねえ？もし、もしよ…組織の連中が私達を追ってきたら…

「…もうその話はやめにしませんか

「だから、もしよ。警戒しておくに越したことはないでしょう？
もし、連中が来たら…私、素直に降伏しようと思うの

「……なんですって？

「裏切り者である私達はどんな扱いを受けても覚悟はできているわ。
けど…この子たちには、何の罪もないもの。
折角授かった大事な宝物だもの…何としてでも守りたいの。
だから、惨めでもいい、どんな命乞いをしてでも、この子たちを…

「……駄目ですよ

「けど、この子たちを守るためなら、私は

「駄目と言ったら駄目です！
あの組織の連中に慈悲がないことなど貴女もよく知ってるでしょう？
…それに。仮にこの子達は守ることができても、どうせ組織に引き戻されます。
そうすればこの子達は、俺たちと同じ末路を辿ることになるでしょう

「……っ

「俺たちがあの街で犯した罪を覚えていますか？
どれだけの冒険者を手にかけたか、その重みを忘れたわけじゃないでしょう？
…俺は、この子達には絶対、あの苦しみを負わせたくはないんですよ
……それは痛いほど分かってるでしょう？

「……そう、ね。その通りね。
ごめんなさい、私ったらそんなことも考えないで…
ただこの子達の命だけは守らなきゃ、ってそのことだけで頭が一杯になっちゃって…

「いいんですよ。
貴女のそういう優しいところが、俺は好きですから。
…守ってみせます、この子達も、貴女のことも…

「…？何か言った？

「いえ、何も…
そうです、タルシスではあの街になかった職業が一部あるそうですよ。
冒険者として稼ぐなら、転職してみるのもいいかもしれませんね

「あら、新しい土地でも探索をする気満々なのね？
…まあ、私達にはそれぐらいしか取り得がないものね…
どんな職があるのかしら？

「噂に聞いたところによると、フォートレス、ルーンマスター、ダンサー…
あと、ナイトシーカー。
暗闇のような装束を身に纏って、短剣や投刃で敵を仕留める職業だそうですよ。
俺たちにぴったりの職業じゃないですか？

「ふふ、そうね。じゃあ私達二人揃ってナイトシーカーになろうかしら？
新しい世界樹の探索…楽しみね？

「ええ、とても。
最果ての街タルシスも…どんな所なのか、とても楽しみですよ